早期の対策で慢性腎臓病の発症・進行を予防しよう

1.慢性腎臓病について

腎臓は、血液をろ過し、体内の老廃物を尿として排泄・身体の水分バランスを整える大切な臓器です。慢性腎臓病とは、何らかの原因によって腎臓の機能が慢性的に低下する病気です。下記①②のいずれかまたは両方が3か月を越えて持続した場合に慢性腎臓病と診断されます。

①尿蛋白陽性などで腎臓の障害が明らかである 

②血清クレアチニン値をもとに計算した簡易糸球体濾過量(eGFR)60未満に低下している

慢性腎臓病の患者数は1,330万人(成人の約8人に1人)と推計され、新たな国民病とも言われています。メタボリックシンドロームとの関連性も深く、誰もがかかる可能性があります。元々、腎臓の機能は、血管の老化などにより加齢とともに低下しますが、さらに糖尿病や高血圧などの血管を傷つけるような病気があると進行が早まります。しかし相当進行するまで自覚症状がないため、気がつかないうちに腎臓の機能が低下して腎不全となることがあり、進行して末期腎不全になると透析や腎臓移植などが必要になります。2021年の日本の新規透析導入患者数は38,000人です。さらに心筋梗塞・脳卒中の発症率や死亡するリスクも高くなります。

富士フイルムグループ健康保険組合では、慢性腎臓病の発症・進行の予防を目標に、2023年度より「富士フイルムグループ健康保険組合・慢性腎臓病対策プロジェクト」を開始しました。

2.慢性腎臓病の危険因子と予防

慢性腎臓病発症・進行の危険因子は、糖尿病、高血圧、肥満・メタボリックシンドローム、高尿酸血症、脂質異常症などで、これらの疾患の予防と早期治療が慢性腎臓病の発症・進行を予防します。特に重要なのは、禁煙、減塩、減量、運動、過度の飲酒を避けること(糖尿病がある場合は禁酒)です。

3.慢性腎臓病の治療

慢性腎臓病は、早期に適切な治療を受ければ腎臓機能の低下を遅らせることが可能です。ある程度腎機能が低下している慢性腎臓病の治療は、かかりつけ医と腎臓専門医療機関の2人主治医制度が推奨されています。腎臓専門医療機関では医師の診察と投薬だけではなく、薬剤師、保健師・看護師、管理栄養士による生活習慣見直し、運動療法、食事療法などの療養指導が有効と言われています。

4.腎臓専門医への紹介

下の表がかかりつけ医から専門医への紹介の基準です。

検診では尿蛋白定性検査を行い、その結果からA1~A3に区分しますが、尿蛋白陽性でも一時的で病的意義がない場合もあり、尿蛋白陽性の人には早朝尿での詳しい検査が勧められています。また、糖尿病が原因の慢性腎臓病では尿中微量アルブミンでA1~A3に区分しなければならず、尿蛋白(-)でA1に区分されても、尿中微量アルブミンを測定して区分すればA2やA3に区分されることがあり、糖尿病以外が原因の慢性腎臓病でもさらに詳しい尿蛋白検査を行えば区分が変わってくることがあります。

eGFRは血清クレアチニン値をもとに計算した、腎臓の機能を大まかに示す値です。体格などによるばらつきが大きく、筋肉量が少ないと高く、多いと低くなる傾向があります。一般的に高齢者は筋肉量が低下しているため、実際の値より高値になることが多いので注意してください。eGFRの値でG1~G5に区分します。検査結果にeGFRがない場合は、計算ツールに性別、年齢、クレアチニン値を入力して自身のeGFRを算出することができます。計算ツールが開かないようでしたら、「eGFR、自動計算」で検索して自動計算のサイトを開いて算出するか、eGFR男女・年齢別早見表(出典:一般社団法人日本腎臓学会)をご利用ください。eGFRの値が45未満の場合は、尿検査の結果によらず専門医紹介が必要となります。ご不明な点等がございましたら、下記の「富士フイルムグループ健康保険組合・慢性腎臓病対策プロジェクト」にご相談ください。

専門医紹介が必要とされる方でこれまでに腎臓専門医療機関を受診したことがない方は、一度総合病院の腎臓内科などの腎臓専門医療機関を受診することをご検討ください。かかりつけ医のいる方や産業医のフォローを受けている方は、腎臓専門医療機関受診について相談してみてください。腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準は、地域やかかりつけ医によって多少異なることがありますので、かかりつけ医のいる方はかかりつけ医の意見を優先してください。

かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準

出典:一般社団法人日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」

5.問合せ・ご相談

 富士フイルムグループ健康保険組合・慢性腎臓病対策プロジェクト
 mail: kenpo-hokenjigyo@fujifilm.com
 Tel : 0465-32-2223