けんぽの部屋
2020年02月06日
「田舎のおモチは美味しいよ!」 健保 常務理事 篠原正泰

少し前に、がんに関する記事を書きました。

がんに関する情報は世の中にたくさん溢れてきていることは喜ばしいことですが、正しい情報もありますが、そうでない情報もあります。

がんだけでなく、世の中にあふれる健康情報には、悪意のあるモノや、販売目的だけのもの、あるいは証拠(エビデンス)がないものが混ざっているケースが多いことは良く知られていることです。

「90%以上の人が効果を実感!」

「毎日食べるだけでこんなに!」

「ハリウッド・セレブも毎日愛用!」

「これで私のがんが消えた」

「みるみる痩せた!」

一度は見たことがありませんか。

たとえば「90%以上の人が効果を実感!」はどのような母集団の90%が効果を認識したのでしょうか。「効果を実感した」という人だけを集めて90%になったかも知れません。

ハリウッド・セレブが愛用すると効果が保証されるのでしょうか。

「みるみる」はどのくらいの時間なのでしょうか。1週間なら害毒の匂いが漂ってきます。

私事で恐縮ですが、米寿を迎える母はけっこう健康オタクで、その母がいうには「戦後は卵は栄養価が高いからどんどん食べなさい」と言われ、一時期は「卵は体に毒だから一日1個にしなさい」となり、また最近は「卵は体に良いからいくらでも」と講義で聞いてきたといいます。「いったい何が正しいのか分からない」とぼやいていました。

人類の歴史とともにあったと思われる「鶏卵」においても評価が変わるわけですから、新しく出てきて好評を博したモノでもいったん立ち止まって「本当か?」と疑ってかかるくらいでちょうど良いのかも知れません。

最近は「ヘルスリテラシー」ということが盛んに言われるようになりました。「リテラシー」とは「読んだり書いたりする能力」のことで「健康情報を適切に入手し選択して行動等に活用する能力」ということになります。

日本人の「ヘルスリテラシー」は世界で見てどうでしょうか。

ある研究(日本人1000人を対象に、47項目の尺度で欧州8カ国と比較)によると日本人は情報の入手、理解、評価、活用のすべてで評価が低かったそうです。

「病気にかかったときに相談できる専門家(医師・薬剤師・心理士など)見つける」が低評価だったとのことで、欧州は「(とても)難しい」とする人が12%だったのに日本は63%にもなりました。インフラとして相談するシステムが一般化していないこともありましょうし、国民性として誰かに頼らないで自己決定していこうとする傾向があるということかも知れません。

インターネットで医療情報を得ることが多いと思いますが、生活習慣病にかかるか、かからないかについても、実は“健康の読み書き能力”が関係していると言われています。

身近でヘルスリテラシーを高めるために最近言われているキーワードは“いなかもち(田舎モチ)”です。

い…いつの情報かに注意! 医療は日進月歩です。最新の情報にアクセス。

な…何を目的として書かれているか? 販売目的ではないですか。

か…書いた人をチエック!。信頼のおける人でしょうか。

も…元の出典は何でしょう。証拠はありますか。実はその人ひとりの体験談かも。

ち…違う情報も比較しましょう。正反対のものがある可能性も。

とても覚えやすいですし、健康情報にアクセスする際のヒントになりそうです。

以上