けんぽの部屋
2019年12月23日
「新型タバコについて(2)」 健セ 産業医 川並義也

前回は、新型タバコの概要について書きました。

今回は、その安全性や禁煙につながるかなど書きたいと思います。

(1)安全性

①新型タバコについて

新型タバコは、多量のプロピレングリコールとグリセロールを肺深く吸い込むことになります。その安全性は確立されていません。将来、肺にどんな障害が起こるか分かっていません。

日本では、化学物質に「安全データーシート」という取扱注意書がついて企業間で取引されています。そこには、プロピレングリコールは「吸入しないこと」と書かれています。グリセロールは目・皮膚の腐食性・刺激性があり、「ミスト、蒸気、ガスの発生を防止する」と書かれています。

⓶有害物質について

タバコ会社は、加熱式タバコは紙巻きタバコに比べて、ニコチン以外の有害物質が90%減ると宣伝しています。ただ、このデーターの出典の多くはタバコ会社の資金提供された研究によるもので、ひも付きでない研究で、そこまで減らないとのデーターも出てきています。

また、タバコ会社は有害物質が90%減ると宣伝していますが、病気が90%減るとは一言も言っていません。実際、タバコを危険因子とする癌や虚血性疾患などの病気は、喫煙習慣1本以上から危険度が跳ね上がります。病気が90%減ることは決してありえません。

③周囲に対して(副流煙)

紙巻きタバコのように先から出てくる副流煙はありませんが、喫煙者の吐く息が副流煙になります。喫煙者の吐く息に含まれるのもエアロゾルのため、吐いてすぐに見えなくなります。紙巻きタバコの副流煙ほど多量ではないですが、有害な化学物質はちゃんと含まれています。煙として見えないので、ある意味よりたちが悪いかもしれません。

(2)禁煙につながるか?

喫煙者は、ニコチン中毒になっています。ニコチン中毒は、ニコチンが脳に作用する時間が早ければ早いほど依存性が強くなるといわれています。加熱式タバコのニコチン血中濃度上昇は、紙巻きたばこより急峻です。より強いニコチン依存を作り出しやすいです。

加熱式タバコは、タバコの先から立ち上がる副流煙がないので、紙巻きたばこよりも肩身の狭さを感じにくくなっています。また、有害物質が少ないと宣伝されていて、合わせて禁煙の動機付けが弱くなりやすいです。

実際、加熱式タバコからの禁煙成功率は、紙巻きタバコより低いとの研究があります。

(3)結局のところ

新型タバコについて簡単ですが解説しました。

電子タバコは、日本では禁煙パイポの改良版と述べました。ただ、安全データーシートで吸入が危険とされているプロピレングリコールとグリセロールを多量に吸入します。健康に悪い禁煙パイポといったところでしょうか。

加熱式タバコは、紙巻きタバコに比べて確かにニコチン以外の有害物質が少なくなりますが、病気になる危険性が大幅に減ることはないと思います。かえって、ニコチン中毒がひどくなる可能性があります。

いずれも、自分の健康も周りの人の健康も損ねます。禁煙を是非に勧めます。

自分の気力で禁煙できればいいですが、ニコチン中毒は手強いです。何か助けが必要な時、健康に悪い電子タバコに走らないでください。禁煙外来では、禁煙達成率の高い「チャンピックス」という内服薬があります。禁煙の助けが必要ならば、是非、禁煙外来を受診してください。