けんぽの部屋
2025年12月3日
「おしゃべりのすすめ」 豊洲健康管理室 保健師 尾﨑咲希

みなさんは昨日1日でどのくらい会話をしましたか。
仕事中にたくさんおしゃべりをすると怒られてしまうと思いますが、普段何気なくしている会話も実はいろいろな効果があります。今回はそんな隠れた健康法であるおしゃべりをお薦めしてみたいと思います。

 

【会話がもたらすメリット】

◇ストレス解消効果
会話で共感を得たり、人と交流して楽しいと感じたりすると幸せホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌されます。
⇒副交感神経が優位になりリラックス効果につながります。
⇒ストレスホルモンであるコルチゾールが低下します。

◇脳の活性化につながる
会話をするためには聞いた言葉の情報処理を行い(聴覚野)、言語を理解し(ウェルニッケ野)、言葉を組み立て発語する(ブローカ野)というプロセスが必要です。さらに実際に話すときには出来事の記憶を呼び起こして(海馬)、表情や身振り(運動野)をつけ、相手の表情を読み取る(視覚野)など数えきれない判断を同時に行っています。脳がフル活用されていることが分かります。

◇呼吸によるリフレッシュ効果
発声することで息を吐くと、自然と次は大きく息を吸う動作が必要になります。脳への酸素供給量が増えることで集中力や思考力が回復します。

◇新しい価値観の発見
一つの出来事を自分一人だけで考えていると同じ思考のパターンになってしまいます。誰かと話をすることで自分では気が付けなかった視点に気づき、新しい価値観を取り入れることができます。

◇社会的つながりの構築
おしゃべりは一人ではできません。社会とのつながりを感じるという安心感は孤独感の軽減につながります。
内閣府の調査では、気軽に話せる相手がいないと答えた人のうち孤独感がしばしば・常にある人の割合が24.5%であるのに対し、気軽に話せる相手がいると答えた人では2.7%の割合の人しか孤独感をしばしばある・常にあると感じている人はいませんでした(図1)。気軽に話せる相手がいるということは孤独感の軽減につながっているとみられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図1 人々のつながりに関する基礎調査(令和6年度)調査報告書

 

さらに、心身の健康状態が良いと答えた人のうち孤独感がしばしばある・常にある人は1.3%ですが、心身の健康状態がよくないと答えた人のうち孤独感がしばしばある・常にある人は22.0%と大きく差があります(図2)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図 2 人々のつながりに関する基礎調査(令和6年度)調査報告書

 

このように孤独感と心身の健康状態は深く関係していることがわかります。現在WHOでは社会的なつながりの欠如が健康寿命に深刻な影響があるとし、解決策を構築するため国際的な連携もとられています。社会的な生き物である人にとって、社会的なつながりを感じることはとても大切なことなのかもしれません。

日頃集中して作業をしているとどうしても煮詰まってしまうこともあるでしょう。そのような時は、少し顔を上げて隣の席の人のタイミングがよければおしゃべりをしてリフレッシュ。何気なく話しかけたことで身近な人の心身の健康状態もほんの少し回復しているかもしれません。

また、年末年始に帰省の予定がある方も多いかと思います。久しぶりに顔を合わせて会う家族との会話はとても有意義ですよね。たくさんおしゃべりをして幸せホルモンをたっぷりとチャージしてから新年を迎えてみてはいかがでしょうか。

 

引用・参考文献・HP
・内閣府HP 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年実施) – 内閣府
・日本赤十字社 和歌山医療センター 声をだすって、すばらしい!|日赤和歌山情報局 Hot(ほっと)|日本赤十字社 和歌山医療センター
・伊藤裕(2017).『ココロとカラダを元気にするホルモンのちから』高橋書店.
・樺沢紫苑(2023).『言語化の魔力』幻冬舎.