けんぽの部屋

2019/01/15

「当然だった悩み」                       健保常務理事 篠原正泰

 

 

 健保に来て医療や保健関係の本を読むことが多くなりました。

 先日、TV放映されたのでご存じの方も多いと思いますが、重度の自閉症者である東田直樹さんの著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』を手にとってみました。

 

 東田さんは、意思を伝えられないことが多い自閉症者の中にあって、PCや文字盤を駆使してそれを可能とした方です。13歳のときに執筆したこの本は、親ですら分からないことが多かった自閉症者の内面を平易な言葉で伝えて、世界の注目を浴びることになりました。

今は28か国の言葉に翻訳されているそうです。

 

 この本を読んで分かったこと—それは、自閉症者も健常者と同じ情動を持っているという、ごくごく当然のことでした。いわく自分の気持ちをそのままコミュニケーションしたい、いわく自分の喜怒哀楽を伝えたい、などなど。

 

 自閉症は、自分の体があたかも別物のように動いてしまったり、突然の恐怖感に大声を上げてしまったり、五感が鋭敏なために音・においが襲ってきてパニックになってしまったりがあるため、少しばかり違う行動をしてしまいがちだそうです。周囲からはそれが困ると言われ、しかし修正できないので苦しむのだと言っています。

 人が心臓の動きを自由にコントロールできないのと同様に自閉症者は体や感覚がそのコントロール下に必ずしもない—–といったら分かりやすいでしょうか。

 

 「一番つらいことは?」というこの本の中での質問には、著者は「自閉症で不便なことはたくさんある。でもそれは我慢できる。むしろ「自分が悩みをもっていることを周囲に理解してもらえないこと」がつらいと。怒られ、笑われ、でも謝ることもできない悩み。また誰の役にも立てないという悩み。「健常人でもおなじ状況なら抱くであろう心情」が理解されないということです。

 

 さらに、「周囲の人が自分自身のことで悩んでいる」こともつらいと独白しています。要するに自分というひとつの個性を認めてもらって、悩まないで欲しいのだと。

 自閉症を個性と見なしてもらえたらとても気分が楽だ、と述べています。

 

 「われわれと同じように彼らも悩んでいる」と考えてあげる。

 それだけで、一段と自閉症者への理解が進むのではないでしょうか。

 

 

 

 <参考>『自閉症の僕が跳びはねる理由』東田直樹(H28角川文庫)